前回は、金の歴史について触れてみました。
今回は、金の特性や性質などについて触れてみたいと思います。
工業分野で活用される金めっきは、金の持つ特性を効率的に利用する代表的な技術です。特に電子部品の接点においては、金の高い導電性と耐食性が接触抵抗を低減し、長寿命化に寄与しています。
それでは、金の特性や性質をみてみましょう!

金の基本特性(物理的・化学的特性)
金(Au)は、周期表の第11族に属する貴金属であり、原子番号79、電子配置[Xe] 4f14 5d10 6s1 を持つ金属です。
自然界においてはほぼ純粋な金属として産出し、その安定性と希少性が特徴的です。以下に、金の基本的な特性についてまとめてみます。
| 項目 | 特性値 | 備考 |
| 原子番号 | 79 | – |
| 原子量 | 196.97 | – |
| 結晶構造 | 面心立方格子(FCC) | 高延性である理由 |
| 比重 | 19.32 g/cm³ | 非常に重い金属 |
| 融点 | 1064 ℃ | 貴金属中では中程度 |
| 沸点 | 2856 ℃ | – |
| 熱伝導率 | 約315 W/m·K | Cuに次いで高い |
| 電気伝導率 | 約45.2 × 10⁶ S/m | Cu, Agに次いで良好 |
| ビッカース硬度 | 約25–30 HV(純金) | 非常に軟らかい |
機械的性質
金は純金の状態では非常に軟らかく、展性・延性に富んでいます。1 gの金で1 m²の金箔を作ることが可能です。
これは、結晶構造が面心立方格子に起因するすべり系の多さにより、原子が容易に移動できるためです。
一方で純金は柔らかすぎるため、工業用途には硬度を高めた合金があり、Au-Cuや Au-Ni, Au-Coなどが用いられています。これらの合金化によって硬度や耐摩耗性を向上させつつ、導電性・耐食性を確保することができます。
化学的特性
金の最大の特徴は、化学的に極めて安定であることです。常温常圧では酸素ともほとんど反応せず、表面に酸化膜を形成しません。
このため、数千年前の金製品が腐食せずに現存しています。また、酸や塩基に対しても安定で、王水(濃塩酸と濃硝酸の混酸)を除いては容易に溶解しません。王水では以下の反応によりクロロ金酸(HAuCl₄)が形成されます。
反応式 : Au + HNO₃ + 4 HCl → HAuCl₄ + NO + 2 H₂O
標準電極電位をみると、金の安定性が明確にわかると思います。
| 反応 | 標準電位 (V) |
| Au³⁺/Au | +1.50 |
| Ag⁺/Ag | +0.80 |
| Cu²⁺/Cu | +0.34 |
| Zn²⁺/Zn | –0.76 |

金の電位は非常に高く、酸化されにくいことがわかると思います。これは、電子部品の接点における耐食性や低接触抵抗を裏付けるものでもあります。
純金は安定すぎて機械的に弱いため、実用的には合金化されることが多いです。代表例を以下に記します。
-
Au-Cu合金:赤っぽい金色をしています。装飾用でよく使用されています。硬度が高くなります。
-
Au-Ni合金:電子部品の接点めっきで利用されています。硬度アップと耐摩耗性を付与することができます。
-
Au-Pd合金:白金色を呈し、耐食性に優れています。歯科材料に利用されたりします。
これらは純金と比べて電気化学的安定性が若干低下しますが、工業的にはむしろ使いやすい特性を与えてくれます。
金のこのような特性や性質から工業用途として活用されている意味を理解いただけたでしょうか?
次回は、もう少し深く踏み込んでみたいと思います。


















































































