前回は、金の特性や性質などについて触れてみました。
今回は、さらに深く踏み込んでみたいと思います。

金は、非常に高価で特性としても優れた金属であることを紹介してきました。
ここで、金の特性を同族元素である銅(Cu)、銀(Ag)と比較してみましょう。
| 特性 | Cu | Ag | Au |
|---|---|---|---|
| 比重 (g/cm³) | 8.96 | 10.49 | 19.32 |
| 融点 (℃) | 1085 | 962 | 1064 |
| 電気伝導率 (×10⁶ S/m) | 59.6 | 62.1 | 45.2 |
| 化学安定性 | 中程度 | 高いが硫化する | 非常に高い(王水のみ可溶) |
| 色 | 赤色 | 白色 | 黄金色 |
電気伝導率ではAgが非常に優秀であるのに対して、Auは劣っていますね。しかし、実用では、Agは硫化や酸化してしまうことで、抵抗を持ってしまいます。Auの方が化学安定性が優れているため、性能的には有利になることが多々あります。使い方を工夫すれば、これらの金属を効果的に活用することができると考えます。
次に機械的特性についてみてみたいと思います。
金は、見た目の美しさや化学的安定性に加え、極めて優れた機械的特性を持つことが知られています。特に「延性」「展性」は金属の中でも際立っていることは前述した通りです。現代ではこの特性が、ナノスケール薄膜や電子部品の信頼性にも大きな影響を与えています。金の硬さや延性・加工性、薄膜としての特性についてみてみましょう。

純金は非常に軟らかい金属であり、ビッカース硬度(HV)は25〜30程度です。これは鉄(約100〜200 HV)や銅(約50〜100 HV)に比べて著しく低く、爪で傷がつくほどです。このため、純金は工業的な耐摩耗性用途にはそのまま使用することは困難なことが多いです。
工業的には、金に銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などを微量添加することで硬度を増し、耐摩耗性を向上させています。特に電子部品用の硬質金めっきは、NiやCoを数wt%含むことで硬度が100〜200 HV程度に達し、接点材料などに利用されています。
合金化による強化方法としては、Cu、Ni、Co などを添加して固溶体を形成し、格子ひずみにより強化する固溶強化。Au-Cu 系では熱処理で生成された析出物により硬度が増し強化される析出強化。ナノ結晶技術により、粒径を小さくして強度を高める微細結晶化などの強化方法があります。
金めっきは純度に応じて硬さが大きく変わり、純度が高いと柔らかく摩耗に弱いため、接点材料では「硬質金めっき」が一般的に用いられています。一方で、半導体のボンディングワイヤなどでは高延性が求められるため、純金めっきが利用されています。このように、用途に応じて最適な硬さに調整して金は利用されているのです。
めっきのように、層の厚さが数十 nm〜数百 nm程度になると、バルクとは異なる機械的挙動を示すことが多くなります。薄膜化により内部応力や結晶粒径が変化し、硬度が上昇することが知られており、特にナノ多結晶膜では、粒界強化(Hall–Petch効果)によって強度が増す傾向があります。膜厚が薄い場合、基材の応力や表面エネルギーの影響を強く受け、脱濡れ(dewetting) が生じ、膜が島状に分離することがあります。基材との結合バランスが最適な厚みを有することが望ましいと考えます。

金が電子部品の接点に使用されるのは、金めっき表面が摩耗しても酸化皮膜を生じない特性により、接触抵抗が低く安定するからです。この特性は、銀や銅にはない大きな利点といえます。
更に、金の特性として、高温で軟化しやすく、他金属との拡散が進みやすい性質を持っています。特にAu-CuやAu-Ni界面では拡散による金属間化合物層が形成され、接点の寿命に影響を与えることがあります。このため、機械的特性だけでなく「拡散制御」が産業利用では重要となっています。
金の優れた化学的安定性に加え、電子的・光学的にも優れた特性を持ち合わせています。これらの性質は、金が電子デバイスや光学デバイスに広く利用される理由であり、金めっきの実用的価値を支えているのです。
電子部品において、接点表面に酸化膜や硫化膜が形成されると接触抵抗が増し、信号伝達に支障をきたす確率が高くなります。銀や銅は空気中で容易に変質しますが、金は不活性であるため 接触抵抗が長期にわたり一定に保たれるのが特徴です。この特性が、金めっきがコネクタやスイッチに多用される最大の理由になります。
いかがだったでしょうか。金を金めっきとして活用することで、様々な技術の発展や商品化が進み、我々の生活が便利になっているのです。世界に約25万トンしかない限られた金をどのように活用するか、そしてどのようにして回収し再利用するか、こうして見てみると、金の価値がますます理解できますよね。





















































































