めっきラインの新規立ち上げに協力させていただきました。
ただ立ち上げるだけではなく
品質、管理方法などの目標がありますので
全てクリアしなくてはなりません。
立ち上げるめっきの工程は
前処理~Niめっき~Auめっき
の引掛けめっきです。
バリエーションは、その他めっき被膜の仕様もありますが
今回は2層構成でした。
完成品は非常に精度の高い被膜を実現しなくてはなりません。
めっき被膜の仕様は
Niめっき 0.5μm±0.03
Auめっき 0.1μm±0.01
更に、被めっき物の被膜の分布も均一にしなくてはなりません。
かなりハードルが高い仕様です。
装置を確認させていただき、ざっくりですが
仕様を満足するためには、装置のセッティングだけではなく
構成も変更しないと実現できないと感じました。
ある程度、お客様がテストめっきをしていたので、データを確認させていただき
そこから得られた見解、更に追加テストで得たい内容を決めました。
何度かテストを重ねる中で、再現しない状況が発生・・・
再現しない原因が何かを追及しないと先に進みません。
しばらく調査を続けていくと
電気的な課題がいくつも確認できました。
・大きく抵抗を持ってしまっている箇所
・抵抗は小さいが、断線と導通を繰り返す箇所
・被めっき物と電極の間で電流分布が不安定なところ
・装置自体の歪み、変形によるジグセットの課題
これらの原因を一つ一つ修正していかなくては
本ラインの条件出しに辿り着かないことがわかったのです。
・抵抗改善については、装置の構造を見直し、接触圧を上げる構造に変更することで対応
・断線と導通を繰り返すところは、装置の加工精度とジグの加工精度を一桁改善し、接触圧を確保しながら、変動幅を最小限に改善しました。
・電流分布が不均一なところは、被めっき物のセット位置と電極の材質やサイズ、配置の最適化を導き出し、めっき厚の分布確保を実現しました。
一通りの装置改善を行ったことで、めっきの再現性はOKです。
ここから、厳しいめっき仕様を実現する条件出しが始まったのです。
新規めっき装置の立上げに関しては
装置が完璧だと思い込んでしまうことで、泥沼から抜け出せなくなってしまいます。
条件出しする人は設備のことが詳しくないので
条件設定などのやり方で対応するばかりで、時間がかかってしまい
量産開始のタイムリミットとなり、妥協して生産開始してしまうようです。
結果として不具合が発生し、小手先で対策が繰り返され
慢性的に不良品が混在しながら生産が行われてしまうのだと思います。
今回は、量産スタートと重なってしまっていたので
量産対応もしつつ、設備改善、条件出しを継続的に行った案件でした。