微細構造とPd合金Microstructure and Pd alloy

Pd合金はFlabR(フラバー)では身近な金属で、馴染みがあります。
この材料について紹介していこうと思います。

Pdとはパラジウムという元素を意味します。

パラジウムと聞いて何に使用されているのかわかりますか?
車好きの方でしたら、自動車の排気ガスの触媒に使用されているのをご存じかと思います。
更に、身近なところでは歯の治療で使用される銀歯に使用されています。
銀歯は、銀が大半を占めていて、そこにパラジウム成分も入っていることと
色が銀色なので銀歯という名前になっているようです。

さて、パラジウムという金属はいくらくらいするのでしょうか?
直近10年のパラジウムの価格(g)相場の推移を見てみると、以下のグラフのようになっています。

2021~2022年は非常に高値でしたが、最近(2024年5月頃)は安くなってきています。
20年前は約1000円だったので、それからすると非常に高くなった金属といえますね。

このような高価な金属を使った合金であるパラジウム合金(以降Pd合金)とはどんなものかというと
主に、Pd(パラジウム)とAg(銀)とCu(銅)を混ぜ合わせた金属のことになります。
混ぜ合わせる比率はいろいろとあるのですが
例に挙げると、Pd:Ag:Cu=40:30:30(wt%)で構成されたものがあります。

パラジウムがPd合金になることで、どのような特性が得られるかというと
高硬度、低抵抗、靭性を合わせ持った非常に優秀な金属になっています。
FlabRでの使用用途としては、半導体検査装置に使用されている検査用プローブの部品が該当します。
明るいシルバーで非常に綺麗な金属です。

更に、Pd合金の優秀なところは
切削加工などで成形する際に、切削しやすい硬さの状態でいることができます。
硬度は約350HVで、自動盤での切削加工においては、特に問題にならない硬さです。
この硬さのまま使用すると変形しやすいので、熱処理を行います。
約350℃の温度で熱処理をすることで、硬度は約480HVにすることができるのです。
凄い金属ですよね。
HVとは、硬さを表す単位で、ビッカース硬さ測定にて算出することができます。

熱処理することで硬度を高くすることを時効硬化処理といいます。
時効硬化処理はエイジング硬化とか析出硬化とも呼ばれています。
簡単に言うと、特定の合金金属の機械的特性を改善する熱処理技術と言えばいいでしょうか。

一般的に、時効硬化処理の主な目的は、以下のことが挙げられます

  • 強度の向上:微細な析出物が格子欠陥に作用して、金属の変形を困難にし、強度が増す。
  • 硬度の増加:析出物が滑り面に対する障害物となり、硬度が増す。
  • 耐食性の向上:耐食性を向上させる場合がある。

 

それでは、なぜ強度が向上するのかについて触れてみたいと思います。
時効処理により、PdやCu、Agの間で微細な析出物がマトリックス内に形成されます。
微細とはどれくらいかというと、約10nmで、ラメラ構造をしているのです。

結晶粒の微細化で強度がアップするこの現象は、ホール・ペッチ効果と言われています。
結晶粒径が小さいほど、結晶粒界が転位の移動を阻害するため、強度が増加することになります。
一方で、ホール・ペッチ効果は、結晶粒径が極めて小さくなると、逆に強度が低下することがあり
「逆ホール・ペッチ効果」と言われています。

上記に出てきた転位とは、材料の内部で塑性変形を引き起こす線状の欠陥のことです。
転位が移動すると、材料は塑性変形します。結晶粒界は、異なる結晶粒の間の境界で、転位の移動を阻害します。
転位が結晶粒界に到達すると、その移動が阻害され、新しい転位が発生して応力が増加していきます。
この結果、材料の強度が増加することになります。

このような現象を活用して、鍛造や圧延などの加工プロセスは、結晶粒を微細化することで、材料の強度を向上させています。

この金属については、また更に深いところを紹介していこうと思います。

 

 

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