「貴金属めっきの量産不具合改善プロジェクト2」の続きになります。
前回までの内容は、不具合発生の仮説検証とその結果と
特殊めっきによる複合要因の可能性について触れたところまででした。
今回は複合要因がどうだったかについて触れたいと思います。
その前に、めっき液の温度の違いにより
今回の不具合と同じ事象が発生するのか、について検証する必要があります。
液温(℃) | 不具合発生率(%) |
35 | 60 |
40 | 3 |
45 | 0 |
50 | 0 |
あまりに極端な不具合発生率にビックリですが
温度の影響が強すぎるめっき液であることがわかってきました。
発生率はともかく、再現はとれたようです。
さて
複合要因がどれくらいの割合で不具合に寄与しているのかを検証したいと考えます。
複合要因には、二つの課題が潜んでいました。
一つは設備的なヒーターの問題
もう一つは、微細部品のめっき液の組成に関するところです。
ここには液温と電流密度の関係があるのですが
析出効率が下がってしまった時に
更に、液の滞留がもたらす二次弊害が潜んでいます。
更にここで問題なのは、複数ラインを同時稼動させた時に
不具合発生率が高くなってしまうことです。
ここでもテストを繰り返し実施し、その傾向を確認しました。
これらの結果から以下の対応を進めることにしました。
具体的には
1. | ヒーターの制御システムを改良し、各ヒーターの温度を精密に管理、調整を実施。 |
2. | 液の流れが滞留しないように槽のレイアウトを見直し、 また熱電対の配置も最適化しました。 これにより、液の均一な流れの確保と局所的な過剰加温を防止。 |
3. | 陽・陰極のレイアウトの見直しを行い、 より安定した電流密度の均一化を実現。 |
4. | 更に前処理工程の見直しと作業手順の改善を行い、 全体の工程の整流化を実施。 |
もう一つの、めっき液組成に関するところになりますが
従来から使用しているめっき液であることと
不具合が発生しなければ製品として問題がないということなので
組成については手をつけませんでした。
より扱いやすく、トラブルを軽減できるような組成や被膜づくりについては
今回は見送り、装置管理のみで対応することになりました。
複合要因の比率ですが、設備80、めっき液20といったところです。
いずれにせよ、これらの対策により、装置が安定稼働し
ロスコストも改善され、生産効率が向上しました。
現場としては、発生のメカニズムが明確になったことが
技術力の向上に繋がったのではないかと思います。
このプロジェクトは延べ6か月にわたるものでしたが
関係者の皆様とは、いろいろと議論が弾み
有意義な時間だったと思っています。
1ヵ月経過後においても、量産ラインは順調に稼働し続けているようです。
今回のプロジェクトを通じて、製造工程の問題を特定し
解決するためには、現場の詳細な確認とデータに基づく実験と解析が
重要であることを再認識しました。
また、原因が複合的である場合、一つ一つの要因を精査し
総合的な対策を講じることの重要性も実感しました。
今後も、このような経験を活かし
企業の生産性向上と問題解決に貢献していきたいと思います。
今回のプロジェクトは、私たちの知識と経験をさらに深め
より効果的な問題解決手法を学ぶ良い機会となりました。