チタンへの白金めっき(Ptめっき)-3Platinum plating on titanium (Pt plating) -3

前回は、チタンへの直接白金めっきの課題と、その前処理について触れてみました。
今回は、白金めっき浴の組成と、めっきがどのようなメカニズムでチタン表面に析出するのかについて考えてみます。

めっき全般的にいえることですが、めっき設備(めっき槽、電気系、整備)を適切に製作・管理できていて、設備に合っためっき液の調製が行えるだけの技術があることが基本です。その上でめっきの析出メカニズムを理解していくことが、質の高いめっきを実現するための重要な要素になります。

チタン上の直接白金めっきは、より難しい部類のめっき方法になるので、そのメカニズムを理解していなくては良質なめっきをすることはできません。

さて、白金めっき浴にはいくつかの種類がありますが、一般的には「塩化白金浴」と「硫酸白金浴」が使用されています。それぞれの特徴についてまとめると以下のようになります。

〇塩化白金浴
塩化白金酸(H₂PtCl₆)を主成分とし、水溶液中で白金イオン(Pt⁴⁺)として存在します。強酸性環境(pH 1〜2)で運用されることが多く、電気化学的に安定な浴として知られています。
ただし、塩化物イオン(Cl⁻)の影響により、析出した白金層の内部応力が高まりやすい欠点があります。

〇硫酸白金浴
硫酸白金(Pt(SO₄)₂)を主成分とし、塩化白金浴に比べて析出膜の内部応力が低い特徴があります。pH 3〜5の範囲で管理され、比較的安定しためっき膜を形成しやすい。しかし、浴の管理が難しく、定期的なメンテナンスが必要になります。

白金めっきの析出メカニズムについて考えてみると

めっきは、電気化学反応によって基材表面でイオンの還元が起こり、核が生成され、そこから核成長し皮膜の厚みを増していきます。

白金めっきにおいては、電解槽内で、チタン基材をカソード(陰極)とし、外部電源から電流を供給すると、白金イオン(Pt⁴⁺)が電子を受け取り、還元されて金属白金(Pt)として析出します。その反応式は

Pt⁴⁺ + 4e- → Pt(固体)

となります。初期の析出は、基材表面に白金原子が吸着し、小さな核を形成することで始まります。その後、白金原子が次々と付着し、膜として成長していきます。この核生成の過程で、表面状態が大きく影響し、前処理が不十分だと密着性の低い膜が形成されてしまいます。白金の析出膜は通常緻密で硬い性質を持ちます。めっき条件によっては、膜内部に亀裂やストレスが生じることがあり、適切なパラメータ設定が不可欠になってきます。

均一で高品質で白金色の安定した白金めっき膜を実現するためには、めっき浴の管理がポイントになります。

適切なpH管理を維持することは、析出速度や膜質のコントロールを安定化することができます。白金イオン濃度が低下すると析出速度が遅くなり、めっき膜の均一性が損なわれます。めっき液の温度は、析出速度や結晶構造への影響が懸念され、重要なファクターになります。めっき液のイオン供給スピードも同様に重要なファクターであり、これらの条件を総合的に最適化する必要があり、その結果、Tiのような難めっき素材に対しても品質の良いめっき被膜を形成することができるのです。

今回はTiに直接Ptめっきをすることが比較的難しいということを取り上げてみました。
Tiだけでなく、他にも難めっき材料はたくさんあります。それぞれに適した条件や技術によって、その素材へのめっきを実現できているわけです。

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