今回は、「蒸気圧」に続き、ディウェッティングに着目してみたいと思います。
基礎的な原理から、金属全般に共通する背景、めっき被膜特有の要因、制御に至るまでをまとめてみようと思います。
ディウェッティング(Dewetting)とはどのようなものでしょうか。

ディウェッティングとは、連続した薄膜が熱的・機械的・化学的な駆動力によって不安定化し、膜が分断されて島状構造や粒子集合体へと変化する現象をいいます。
特に金属薄膜やめっき被膜においては、表面・界面エネルギー、拡散挙動、結晶粒構造、基板との相互作用が複雑に絡み合って、実用特性に大きな影響を及ぼします。
ディウェッティングの本質は、薄膜系が持つ自由エネルギーの低減過程として理解することができます。
連続膜は一見安定に見えますが、膜厚が薄くなるほど表面エネルギーと界面エネルギーの寄与が支配的となり、必ずしも熱力学的に最っとも安定な状態ではなくなるのです。
薄膜が基板上に存在する場合、膜表面の表面エネルギー、膜と基板の界面エネルギー、基板表面の表面エネルギーの各々のバランスによって、連続膜が維持されるか、あるいは部分的に露出した基板と膜の島状構造に分離するかが決まります。
つまり、ディウェッティングは、膜が破断して島状になることで全体の自由エネルギーが低下する場合に進行するのです。
金属薄膜においてディウェッティングが顕著に現れる理由の一つは、金属原子が比較的高い拡散能を有する点にあります。

特に融点の低い金属や、粒界拡散が支配的なナノ結晶膜では、加熱によって原子移動が活発化し、膜厚のわずかな揺らぎが増幅されます。
初期段階では、膜表面や界面に厚さの不均一が拡散によって助長され、薄い部分がさらに薄く、厚い部分がさらに厚くなります。これが進行すると、最終的には膜が完全に断裂し、孤立した島状粒子が形成されます。
ディウェッティングの進行様式には大きく分けて二つの典型的なメカニズムが存在します。
一つは、膜中に存在する欠陥やピンホール、粒界などを起点として孔が成長し、それらが連結することで膜が分断される孔成長型ともいえるディウェッティングです。
もう一つは、膜全体にわたる厚さの不均一が連続的に増幅され、周期的な凹凸を経て島状化に至るスピノーダル型ともいえるディウェッティングがあります。
金属薄膜では、初期欠陥密度や結晶粒径、成膜条件によって、どちらが支配的になるかが変化すると考えられます。
次回は、ディウェッティングをめっきの観点から考えてみようと思います。



























































































