前回は、銅の熱伝導性などについて概要に触れてみました。
今回は、銅製カップの熱伝導性能の優位性を、他素材(ステンレス、陶器、ガラスなど)と比較してみたいと思います。
アイスコーヒーを飲むときに使用すると考えられるカップの素材を洗い出してみました。各素材の熱伝導率(λ)の比較表はこのようになります。
素材 |
熱伝導率(W/m·K) |
特徴 |
銅 | 約 390–400 | 極めて高い熱伝導性。 |
アルミ | 約 205 | 銅より劣るが軽くて高熱伝導。 |
ステンレス | 約 15 | 銅に比べると断熱性あり。 |
陶器 | 約 1.0〜2.0 | 非金属。保温性が高い。 |
ガラス | 約 0.8〜1.0 | 熱が伝わりにくく、保温性が高い。 |
PET | 約 0.15〜0.24 | 高断熱性と外側に熱が伝わり難い。 |
紙コップ | 約 0.05〜0.1(推定) | 高断熱性と外に熱がほぼ漏れない。 |
銅やアルミは極めて熱が伝わりやすいことがよくわかります。一方、PETや紙コップは断熱効果があることがよくわかります。
実際にアイスコーヒーの温度が時間とともにどれくらい変化するのかについて考えてみます。あくまでもシミュレーションなので実際は違う可能性があります。
5℃に冷えているアイスコーヒーを室温28℃で飲んだ場合を想定してみます。アイスコーヒーの量と氷の量は、厳密には関係がありますが、難しく考えず、一般的な量として考えてみます。
時間経過 |
銅製カップ |
ステンレス |
陶器 |
PET |
紙コップ |
0分 | 5℃ | 5℃ | 5℃ | 5℃ | 5℃ |
5分 | 6.5℃ | 6℃ | 5.8℃ | 5.5℃ | 5.3℃ |
10分 | 8℃ | 7℃ | 6.5℃ | 6℃ | 5.8℃ |
15分 | 9.5℃ | 8℃ | 7.2℃ | 6.5℃ | 6.3℃ |
20分 | 11℃ | 9℃ | 8℃ | 7℃ | 6.8℃ |
25分 | 12℃ | 10℃ | 8.7℃ | 7.5℃ | 7.2℃ |
30分 | 13.5℃ | 11℃ | 9.5℃ | 8℃ | 7.5℃ |
銅製のカップのアイスコーヒーは30分後には、紙コップのものより6℃も高くなってしまいます。このデータだけでは保温性の良い紙コップで飲んだ方がいいじゃないかと思いますよね。しかし、飲んでいる時の口当たりでは、結露している銅製カップの方が冷たく感じることができ、紙コップでは感じられないヒンヤリ感があります。また、カップを持った時の冷たさは、PETや紙コップとは比較にならないほど体感することができます。
実際のアイスコーヒーは氷が入っていて、長い時間低温をキープするように配慮されています。この場合、銅製カップでアイスコーヒーを飲んでいる過程では、氷が存在する限りはスタート時の5℃に近い温度をキープすると考えられ、長時間経過しても氷が残っていれば冷たいアイスコーヒーを五感で楽しむことができるのです。
これは銅製カップの優れた熱伝導性により、氷が絶えず熱を吸収し続けるからであり、それにより安定した冷たいカップを演じることができるのです。
暑い日に、銅製のカップで提供してくれる喫茶店に行って、冷たいアイスコーヒーを楽しんでみてはいかがでしょうか。