前回は、3Dプリンターの導入や作業の流れについて触れてみました。
今回は、3Dプリンターの種類とその特徴について触れてみたいと思います。
3Dプリンターにはいくつか方式があります。3種類の方式について説明をしてみます。
1. 熱溶解積層方式
Fused Deposition Modelingの略称でFDMと呼ばれ、一番普及している成形方式です。フィラメントという樹脂を加熱して溶かし、ノズルから押し出して積み上げていきます。フィラメントにはいくつもの種類の樹脂が用意されており、PLA、ABS、PETGなどがよく使われていたりします。我々が使用して難しかった材料では、PCやPPがあり、条件出しには非常に時間がかかることと、成功率が少し下がってしまうという懸念点があったりします。しかし、よく使用されるPLAであれば、ほぼ失敗することはなく、精度も非常に高く綺麗に成形することができ満足度は高いと思います。
2. 光造形方式
Stereolithography Apparatusの略称でSLAという方式やLiquid Crystal Displayの略称でLCDというものがあり、液体樹脂(レジン)に紫外線(UV)を当てて固める方式があります。液体の中で、3Dモデルを形成する部分だけに数秒の紫外線を照射することで少しずつ積層していきます。積層の間隔は10μm以下でも対応することができ、精度が高く、非常に細かい造形に向いています。積層痕があまり目立たないので、外観を気にする場合には非常に有効です。課題点があるとすると、液体を取り扱うので周りが汚れる可能性が高いです。その対策が必要なことと、成形後の後処理(洗浄・硬化)が面倒です。樹脂を洗い流して、サポート材を除去して、二次硬化をしたりと、持ち回りも多く大変な作業が発生します。しかし、出来上がったものの精度を確認するとその満足度は非常に高いでしょう。
その他、金属や粉末を焼結する3Dプリンターもありますが、今回は樹脂のみの紹介として割愛します。
このような便利な3Dプリンターですが、当然ながらメリットとデメリットがあります。メリットとしては、少量・多品種のモノづくりができること、アイデアをすぐカタチにできること、工具不要で複雑な形が作れること、金型がないと作れなかったものが作れることです。専門業者に依頼して大きな費用を投資しないとできなかったことが自力でできます。
それに対して、デメリットは、印刷に時間がかかります。大きさによっては24時間以上かかることもあります。材料や方式によっては精度や強度に差が出ることがあります。熱溶解方式では強度は十分あるのですが、光造形方式では強度が弱く、機構部品などへの使用には注意が必要であると感じます。同じものを多数個成形する場合、熱溶解方式に比較して光造形方式は一回の成形で1個成形しても複数成形しても時間が同じで済むという特徴があり、これらを理解して使い分けることで生産性が上がることもあります。
熱溶解方式(FDM)と光造形方式(LCD)の違いについて、弊社が使用しているものに対して簡単にまとめてみました。
項目 | FDM(熱溶解積層方式) | LCD(光造形方式) |
材料 | フィラメント(線状の樹脂) | 液体レジン |
成形方法 | 溶かした樹脂をノズルで積み上げる | UVライトでレジンを固める |
精度 | 中程度(積層痕目立つ) | 高精度(表面滑らか) |
強度 | 強度あり、実用的 | 脆い、割れやすいが精密 |
後処理 | サポート除去 | サポート除去、洗浄とUV二次硬化 |
ニオイ | ほぼ無臭 | 臭い(換気重要) |
材料コスト | 3000円/kg くらいから | 4000円/Lくらいから |
プリンター価格 | 14万円くらい | 13万円くらい |
最初はどちらを選べばよいか迷った場合、FDMが良いと思います。比較的、材料が安価で、成形品の強度があり、扱いやすいと考えます。その後、より精密に外観を重視したい場合にLCD方式を導入するのがよいと思います。
次回は、印刷時のポイントやトラブルシューティングに触れてみたいと思います。