前回は、3Dプリンターの種類やその違いについて触れてみました。
今回は、印刷時のポイントやトラブルシューティングに触れてみたいと思います。
これまでの実績において、印刷時のポイントとなることについて紹介してみたいと思います。
FDM(熱溶解積層方式)において
1. ベッドのレベリング
ノズルとベッド(成形品を固定する板)の距離を装置が自動で計測する機構になっているのですが、その前に、ノズルとベッドの隙間を適切に調整しておく必要があります。その際、ノズルの先端にフィラメントが出ていて正しく隙間調整ができていないと、綺麗に印刷ができないことがあります。特に使用する樹脂の種類によっては、それが顕著に表れる場合があるので要注意です。どんな樹脂であろうとノズルとベッドの隙間調整はフィラメント交換の度に行っています。これにより、印刷トラブルは発生しなくなりました。
2. ノズル温度とベッド温度
材料毎にフィラメントを溶解するノズルの温度が決まっています。また、ベッドの温度もフィラメントに対して何度が適正かが決まっています。しかし、装置による個体差があるため、実際に印刷してみてフィラメントとベッドの温度の最適値を見つけるようにしたほうが良いと思います。この確認をする際や実際の印刷において、装置が安定してフィラメントを供給できていることが大前提です。フィラメントの種類によっては、フィラメントガイド(フィラメントを通すチューブ)との抵抗が大きくて、フィラメントの送り出しが良くなく、成形トラブルになったことがありました。この時は、正規のフィラメントのガイドを使用せずに、直接エクストルーダーというフィラメントをギアで送る部分に供給するようにして対処し解決しました。時には、エクストルーダーの中に装着されているスプリングがズレて、ギアがフィラメントにしっかりと圧力を伝えられずに、フィラメント供給不良を発生したこともありました。
3. フィラメントの保存状態
湿気を吸ったフィラメントは成形不良を発生させるのでしっかりと水分除去をする必要があるとよく聞きます。普段の保管方法では、タッパーにシリカゲルを入れて保管しています。このような使用方法であれば、敢えて水分除去する必要はありません。このような管理だけで、水分による印刷の失敗をしたことは一度もありません。特に夏場は湿度が高い時期なので気になるかもしれませんが、冬場の印刷結果となんら変わりがないので、この程度の管理で大丈夫だと思います。
4. カーボンフィラメント使用時のセット替え
より強度のあるフィラメントとしてカーボンが入ったものがあります。成形品は確かに強度があり、ジグとして普通に使用できるほど素晴らしい素材であると感じます。このフィラメントを使用する際に、装置のセット替えをする必要があり、それが少々面倒なのです。加熱部であるノズル周辺の部品や基板に接続されているコネクターを外したりと作業的には結構マニアックです。カーボンフィラメント用のノズル一式に交換した後、ベッドのレベリング調整やフィラメントの流動性をチェックして、ノズルが劣化していないかを確認する必要があります。カーボンフィラメントは溶融温度が高いため、専用ノズルとはいえ、ノズルの内面にフィラメントが焼き付いてしまっていることが多々あります。焼き付きがわかった場合、新品に交換するか、内面の修理を行う必要があります。このような手間をかければ、綺麗に印刷でき、非常に高い満足度を得られるのではないでしょうか。
LCD(光造形方式)において
1. 印刷品質について
最も気を付けなくてはいけないことの教訓として、FEPフィルムの問題がありました。印刷が完了して、プラットフォームを見てみると成形品がないということがあります。このような場合、FEPフィルムに残骸が張り付いたままになっていることが多々あります。そこで、この残骸を除去するのですが、除去する際にフィルムに傷をつけてしまったり、目視では見落としてしまうような残骸を除去しきれなかったりすると、その後の印刷において成形品の表面の仕上がりに著しい影響を与えてしまいます。このような印刷不良が発生しないためには、印刷条件の検討が必要です。初期層の露光時間の調整が重要です。
2. サポート材の除去痕について
印刷後の後処理として、サポート材を除去する必要があります。何も気にせずサポート材を除去すると、除去した部分は凹の形状となってしまいます。特に、成形品の外観として凹があっては困るものはサポート材が厄介になってきます。凹になっても良いところは気にせずに外しても良いかと思いますが、大事なところは凸に残しておいて、その後に慎重に面一になるように処理をしてあげれば、綺麗に仕上げることができます。結局は、手間をかけた分、綺麗に仕上がるというわけです。
FDMもLCDも、一種類のフィラメントまたはレジンを使用する限りであれば、一度条件が出てしまえば容易に印刷を繰り返し行えます。材料を変更するといろいろな問題が発生するので、慣れないうちは、一種の材料だけで印刷をしていくのが良いと思います。
今回は、3Dプリンターの概要について触れてみましたが、いかがだったでしょうか。
FlabRでは、これらの3D印刷したものにめっき加工をしています。なにかご要望がございましたらお問い合わせください。