前回は、注意残余が強まる心理的要因とその影響について考えてみました。
今回は、注意残余への対処について考えてみたいと思います。
では、注意残余はどのように扱うのが合理的なのでしょうか。
ポイントは、注意残余を「気合いや根性で抑え込むべきもの」と考えるのではなく、人の認知の仕組み上、自然に生じるものとして受け止め、その起こり方を工夫することです。

注意残余は意思の弱さではなく、脳の働きの結果として残る「考えの名残」のようなものだと考えると、対処の方向性が見えやすくなります。
実務の場面で特に効果が高いのは、タスクを切り替える前に、今やっている作業Aをどうやって区切るかをあらかじめ決めておくことです。
作業を最後まで終えられない場合でも、「次にやるべき具体的な一歩」「判断を保留している点」「必要な資料や情報」「次の締切」などをメモとして外に書き出しておきます。
こうすることで、頭の中で「忘れないように覚えておく」必要がなくなり、脳の負担を軽くすることができます。
未完了の目標は、はっきりした形で整理されていないと、別の作業をしている最中にも思い出されやすくなりますが、次にやることが具体的に決まっていると、こうした割り込みの思考は起こりにくくなります。
計画を立てることで未完了課題の影響が弱まるわけです。
この方法は、心理的には「先が見えている」という感覚を生み、不安や落ち着かなさを和らげる効果があります。
同時に認知的には、頭の中で保持していた「再開するための覚え書き」をノートやツールに預けることで、作業記憶を空ける操作だと言えます。
その結果、新しい作業に向けて注意を切り替えやすくなり、注意残余を必要以上に引きずらずに済むようになります。

次に考えたいのは、仕事の切り替え方そのものをどう設計するか、という点です。
注意残余は、作業を切り替えるたびに生じやすいため、短い時間の中で何度も行ったり来たりする状態(メールを見て資料に戻り、またチャットを確認して資料に戻る、といった往復)をできるだけ減らすことが大切です。
似た種類の作業はまとめて行う、いわゆる「バッチ処理」を意識するだけでも、注意残余が生じる回数を減らすことができます。
タスクを切り替えること自体には、思っている以上に脳のエネルギーが使われます。
考え方や作業のルールを切り替え、不要な情報を脇に置き、新しい情報に注意を向け直す必要があるからです。
そのため、切り替えの回数を減らすことは、結果として脳全体の負担を下げ、仕事の効率を保つうえで素直に効果があります。
とはいえ、すべての切り替えをなくすことは現実的ではありません。
どうしても作業を切り替えなければならない場合には、AからBへ移る前に、ほんの短い「切り替えの時間」を挟むことが役立ちます。

この時間は1〜3分程度で十分で、深呼吸をして気持ちを落ち着かせるだけでなく、「これからBで何を達成するのかを一文で書き出す」「Bに関係のある資料だけを開く」といった小さな準備を行います。
こうした短い準備は、頭の中で作業モードを切り替える助けになります。
前の作業の考え方をいったん脇に置き、新しい作業に必要な情報や目的に注意を向け直すことで、スムーズに次の仕事に入れるようになり、注意残余を引きずりにくくなります。
次回は、注意残余と心のセルフマネジメントについて触れてみたいと思います。


































































































